★イルカ発見!! 〜気持ちが伝わった〜★
船に乗りこみ、港を出ると凄い波だった。船は木葉のように揺れ、つかまっていないと怖いくらいだった。西の方から風と波が来ていたので、東の方へ進んでいくと、波はかなり収まってきてみんな一安心。しかし、海が荒れているのは事実であり、ちょっと元気もないのも確かだ。島を見ると、どこも絶壁だ。今も侵食は進んでおり、そのうち御蔵島は無くなってしまうと
みちおさんは冗談を言っていた。その昔は、御蔵島も絶壁ではなく、なだらかな地形だったかもしれない。そうでないと、縄文時代や、13世紀に上陸することすら難しかったように思える。絶壁のいたるところに滝が見える。昨晩の雨によって出現した滝もある。
まんまは屋久島に行った事が無いのだが、みんなは屋久島みたいだと言っていた。御蔵島は降水量が多く、伊豆七島で唯一水力発電所がある。雑談をしながら船に乗ってから15分くらいたっただろうか、突然、「イルカがいた!」と叫び声が聞こえた。え、本当に居るの?おお、時折せびれが見える。どこどこと、みんなのテンションが急激に上がった。イルカが居たとしても、興味が無い場合は過ぎ去ってしまうこともある。
みちおさんは一人冷静に船を操作して、イルカの様子をうかがった。どうやら、イルカの方から近づいてきてくれたようだ。特に指示はなかったが、すでに全員マスクを装着して準備万端だった。
みちおさんの合図とともに次々に海の中に静かに入っていった。静かに入らないとイルカが驚いて逃げてしまうのだ。海中に入ると思ったより視界が悪い。しかし、イルカの鳴き声が聞こえてくる。
みちおさんはその昔、声は聞こえるが、姿が見えないのが怖かったと言っていたが、今は姿が見えないと焦るばかりだ。思わず、思いっきり泳いでしまった。
昨日のことを思い出した。追えば相手は逃げてしまう。とゆっくり水面を漂っていたら海底付近にすーっとイルカが現れた。ハヤル気持ちを押さえ、じっとしていると、垂直にゆっくりイルカが近づいてきた。目の前までくるとぴたっと止まり、ゆっくり回転してお腹を見せていた(写真→)。犬が信頼できる人にお腹を見せるようでもあり、「何しているの?」と話しかけてきているようにも思えた。あまりの感激に言葉はでなかったが、イルカとの対話を楽しめたような気がする。
フランケンが昨日の晩におまえが魚を逃がしたと言われた時はちょっと凹んだが、今は感謝感謝。ありがとう。
その後は写真を撮るので一生懸命だった。視界は悪かったが、あちこちにイルカがいた。デジカメだと反応が鈍くなかなかタイミングが合わないのにちょっとイライラ。辺りを見まわすとそれぞれ、イルカとの一時を楽しんでいたようだ。
あやちゃんとゆうちゃんは潜ってイルカと一緒に泳いでいるようだった。実際楽しんだのは10分くらいだったかと思う。イルカはどこかへ行ってしまった。船に上がってからも、みんなの興奮は収まらない。まるで、子供のようにはしゃいでいる。同時にみんな喋るので、あまり聞き取れなかった。(笑)みんなは大満足だったが、イルカはそうでもなかったようだ。
みちおさんは「イルカは遊びたかったようだけど、みんなが見ているだけで遊んでくれなかったのでちょっと飽きちゃったかな?」と言っていた。そうか、もっと遊んであげればよかったんだ。イルカは同じ事をすると喜ぶようだ。よし、ガゼンやる気アップだ。
また、船を走らせ、イルカを捜す。しばらくしてまたもやイルカ発見。もしかしたら、先ほどのグループかもしれない。今度こそは遊ぶぞ。海の中に入ると、ずっと並んでいるイルカがいた。一頭は白くてちょっと小さい。親子かな?イルカはオスとメスの集団にわかれて行動する。メスの集団の中には、子供を産んだことがない若いメスもいる。若いメスは、他の子供のベビーシッターになって、子育てを学ぶのだ。イルカの中にも社会があることに感心してしまった。ということで、その場では親子なのか、ベビーシッターなのかはわからなかったが、後から、シャクレが子供を連れていたという話しがあった、シャクレだったら親子かもしれない。御蔵島ではイルカの固体調査をしていて、一頭毎に名前をつけている。シャクレは今年出産したそうだ。今回は、イルカと泳ごうと思ったのだが、水中カメラを持っているとどうも泳ぎにくい。カメラを置いていけば良かったとちょっと後悔した。後から聞いた話なのだが、
まんまの周りに結構イルカが近寄ってきていたらしい。全然気がつかなかった。ごめんよ、せっかく遊ぼうとしてくれたのに、相手にならなくて。
今回も遊んでくれたのは10分くらいだったと思う。その後、もう一度イルカと遭遇したが、移動中だったようで、そのまま通りすぎてしまった。居たからといって必ず遊んでくれる訳でもない。港に帰る途中で、「なかなかイルカに会えない人もいるのに、今日はこんな天気で、しかも他に船が出ていない中で、イルカに出会えてラッキーだったね。」と話していた。その話しの結論は、「ラッキーなんかじゃなくて、みんなの気持ちがよかったんじゃないかな。」ということになった。あまりにも会いたいと言う気持ちが強すぎると人も動物も警戒してしまう。天候が悪くちょっと諦めムードで、ただ単に海にいる同じ生き物だった事が、今日の結果につながったんだな。これから、いろいろなフィールドに行く時、何度となく今日のことを思い出すだろう。